実際の現場で働く整形外科看護師の視点でブロック注射についてお話します。
以前勤務していた整形外科は院長がブロック注射の名医と呼ばれ、全国から患者さんが通っていました。私達看護師が指示に従って注射をつくり、介助にあたります。患者さんは、腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などによる強い痛みを持つ人もいれば、月1、2回のルーティンとしてブロック注射に通う人がいます。ただし、あまりにも短期間でブロック注射を行うと保険適用外になってしまいます。(ご参考までに)
よくある副作用としては、注射後の血圧低下や悪心、寒気、足のふらつき等です。ただし、30分から1時間ほどで大抵のケースは代謝に伴い改善します。まれに呼吸抑制やアナフィラキシーショックといった重大なケースもありますがほとんど見られません。
そもそもブロック注射でなぜ痛みが消えるのかご存知でしょうか?ブロック注射には麻酔薬やステロイド剤が使われます。それを局所的に打つことで、痛みや炎症によって興奮状態にあった神経が落ち着き、痛みの伝導が遮断されます。痛みが強いとその周辺の筋肉や血管が収縮してしまい、血行不良となり更に痛みを悪化させてしまうため、痛みの悪循環を止めるためには有効な治療法と言えます。特に急性期のヘルニアなど痛みがピークの時には救世主になるのではないでしょうか。患者さんを見ていても、効果の良さがわかります。
問題なのは、慢性的な痛みの場合です。陳旧性(古い)の腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などを抱える人達の多くは常に腰痛に悩んでいます。その痛みを解消をするために注射を希望するのですが、正直ほとんどのケースでよくなることはありません。もちろん既に述べたように、注射には麻酔薬が使われているために一過性に痛みの消失や改善はしますが、数日もしくは数週間で元通りです。
慢性腰痛を抱える人の多くは、圧倒的な運動不足です。注射に限らず、湿布薬やロキソニンなどの痛み止め、マッサージだけを長年続けていても、その間ずっと筋肉は減り衰え続けていきます。そしてそのまま高齢期に突入してしまうと何が起こるか想像がつくのではないでしょうか?筋肉量や柔軟性の低下が背骨を歪ませ、支えることができなくなった身体は、弱い腰などの関節にさらに負担をかけることで痛みを悪化させていくのです。
10年以上注射で通う患者さん達がいます。「本当に痛みが取れて楽になります。先生に感謝です。」と笑顔で話されますが、内心とても複雑です。大事な時間を刻々と注射などに頼りながら生活していると、身体を治せるチャンスは日々失われていきます。それを伝えず注射や投薬を続ける医師にも疑問はありますが、結局のところ選択するのは私達自身です。注射のメリットを上手に使いながら、同時に運動を取り入れて根本的に身体を治していかなければいづれ注射によるメリットも失われてしまいます。
注射だけに頼り、他に何もしてこなかった患者さん達は歳をさらに重ねながら日々辛そうに日常生活を送っています。ブロック注射を検討している方、そして、長年注射だけを続けている方に少しでも参考になれば幸いです。